ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

感想31『君の膵臓をたべたい』

50. 住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉文庫) 再読したい度:☆☆☆☆★ 本ブログを読んでくださった方から「私が再読したいと思うのはこの本だけ」と紹介いただいた一冊。ほか、何人かの友人知人からも勧められたことのある本だ。悔しいが、面白かった。悔し…

ソリの記憶、タライの笑い

昔、おそらく幼稚園にも通う前の話だ。冬、雪国が故郷の私は、友達と駐車場で雪遊びをしていた。 当時はアパート暮らしで、私は一階、その友達は二階に住んでいた。アパートは、駐車場から階段を五、六段ほど上がって一階の居室が並ぶ廊下にたどり着くような…

声を上げることの大切さ、無力さ

意見を述べることは重要である。学生時代、板書をルーズリーフに書き留めていた。物理や数学では図を描くし、また式も微積分やら行列やら縦幅が必要になることが多かったので、罫線のない、無地のルーズリーフを愛用していた。大学生協にはそれが売っていな…

感想30『元気が出る俳句』

49. 倉阪鬼一郎『元気が出る俳句』(幻冬舎新書) 再読したい度:☆☆☆☆★ 壮大だったり前向きだったりして元気の出る俳句が紹介されている。食べ物、動物などのテーマ別に十二の章に分けられているので、好みのものをピックアップして鑑賞することも可能だ。…

3000円60回払いという生き方

ゴールデンウィークは出張の代休を利用して7連休にした。そして、初日から6日間を妻と私の実家への帰省に費やした。交通手段は息子が飽きたり暴れたりしてしまったときのことを考えて、レンタカー。ワイルドで狂気的なドライブ、怒りのデスロード、死のカー…

感想29『海賊の世界史』

48. 桃井治郎『海賊の世界史 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで』(中公新書) 再読したい度:☆☆★★★ 図書館シリーズ。海に出る男として、そして『ワンピース』マニアとして、この歴史を知らぬわけにはいかない。高校では世界史を選択していたが…

最も幸せ

友人が結婚する。一週間ほど前に、婚姻届の証人のサインを頼まれた。数年前に結婚する際、私が証人を願いしたのは何を隠そう彼だったから、遂に私にも出番が来たか! と喜ばしい気持ちだった。そして先週末、サインをしてきた。字の下手くそな私は、元来その…

感想28『蛇を踏む』・『晩夏のプレイボール』

46. 川上弘美『蛇を踏む』(文春文庫) 再読したい度:☆★★★★ 図書館で借りた本。第115回芥川賞受賞作。表題作を含む3作を収録しており、どれも好みがはっきり分かれそうな物語だった。 表題作は、踏んだ蛇が人間の姿となり、家に住み着いてしまう不思議な世…

「受けること」と「発すること」

半年ほど前、諸事情により2ヶ月間くらい一人暮らしをしていた。だからといって変わったことはほとんどなく、普段通りのだらりとした生活が続いた。唯一、特別だったのは、自炊をしたことだろう。朝は納豆やめかぶをご飯にぶっかけるだけなので手間はないが、…

宮崎・鹿児島出張記

先日、宮崎県・鹿児島県に出張した。目的地までの道中、何箇所か立ち寄ったところがあったので、旅行記としてここに綴りたい。はじめに断っておくが、以下は私が現場で見聞きしたことを主体にまとめている。必ずしも情報の裏を取っていないことに注意して欲…

ソニックおじさんの杖に発電機を仕込んではどうだろう

今回は表題のとおり、ソニックおじさんの杖に発電装置を仕込んではどうだろう、という提案と考察をしたいと思う。そのためにはまず、ソニックおじさんとは何者かという説明が必要だろう。 ソニックおじさんは朝、我が家の近所に現れる老人だ。決まって、駅の…

気づけば元気

仕事で疲弊しきった友人と落ち合って、近所のスーパーに立ち寄ったときだ。 いつものように酒を選び、つまみのコーナーに向かった。 「最近、ナッツとドライフルーツにはまってるんだよ」 「俺も」「いや俺のほうが」「うまいよな」「うむ。それだけあればい…

感想27『悲しみよ こんにちは』

45. (著)フランソワーズ・サガン(訳)河野万里子『悲しみよ こんにちは』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆☆★★ 再読シリーズ。十代の少女セシルと家族、友人たちとの一夏の経験を描いた作品。早くに妻に先立たれ、以来刹那的な恋愛を好む父と、それを許容す…

日本酒4『無手無冠 酒槽一番汲み』・『亀泉酒造 上撰辛口 土佐の地酒』

ろばた焼仙樹 本店〒780-0052 高知県高知市大川筋1-3-47 088-823-7769地図や店舗情報を見るPowered by ぐるなび[{"@context":"http://schema.org","@id":"https://r.gnavi.co.jp/70znetpp0000/","@type":"LocalBusiness","address":{"@type":"PostalAddress"…

船乗りは、若い

昨年末に、航海中の時間と記憶の異質性について触れた(2021年の振り返り)。海と陸とでは、空間はもとより時間にも大きなギャップがあるような感じがする。そして、その結果として、その間には記憶の乖離のようなものが生じる。船上の生活は、陸上の”日常”…

座右の銘候補を考える

年始に「座右の銘を考える」というのを目標として掲げた(2022年の目標 )。これから数十年、ひいては人生(そういうと仰々しいが)をかけて達成すべき目標をもっていても良いと考えたのだ。思い立ったのは、とある組織の新任職員の紹介ページを眺めていたと…

感想26『老人と海』・『晩夏─少年短篇集』

43.(著)ヘミングウェイ・(訳)福田恆存『老人と海』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 再読シリーズだが一度目の記憶はほぼなし。漁師生活最後の栄冠たる巨大魚の捕獲に執着した老人の、巨大魚、ひいては海という大自然を通した、老人自身との対話である。…

2022年の目標

年が明けて少し時間が経ったが、本年の目標を掲げたいと思う。昨年、それなりにうまくいったように、的を絞って、手に届きそうな目標をいくつか考えてみた。 【生活に関して】 1. 保険に加入する まさかの継続目標。よくわからんのよ。優しく教えてくれて、…

2021年の振り返り

今年の初めに掲げた7つの目標に沿って、今年一年を振り返っていきたい。 【生活に関して】 1. 保険に加入する→× 哀れなり! 先を見据えた行動など皆無! 先日、申請書を手に入れるための申請書を出したところ。 2. 引越し→◎ 子が生まれるのを機に、ばっちり…

まだ階段は一段飛ばしで下らない

階段を一つ飛ばしで下りるのが怖くなった。おそらく高校生くらいまでは、難なく降りていたはずだ。少なくとも、中学時代には部活の階段トレーニングでやっていたから間違いない。 階段を駆け下りることをしなくなったのはいつからだろう。上りは、一段飛ばし…

肝油ドロップの匂い

コンディショナーを替えて数日、ずっと何かの匂いに似ているなと思っていたが、ようやくひらめいたものがあった。肝油ドロップの匂いだ。 乳白色の潰れた楕円体、さながら小さな碁石のようなそれは、表面には白い粉末か顆粒が付着していて、噛むとジャリっと…

『いつも何度でも』の包容力

ご存知『千と千尋の神隠し』の挿入歌である。作詞は覚和歌子氏、作曲と歌は木村弓氏だ。映画の公開(2001年)当時、私は小学生であった。中学生時代には、学級ごとの出し物か何かでこの歌を合唱した記憶がある。 先日、現在の木村弓氏が歌うこの曲を聴いて涙…

感想25『あすなろ物語』

42.井上靖『あすなろ物語』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆☆☆☆ 読み始めてすぐ、いつか読解問題で取り上げられていたのを読んだことを思い出した。一度問題を解いただけなのにはっきりと記憶に残るほど、問題の部分(本書の第1章の終盤にあたる)は自分にとっ…

私だけの音楽

中・高生の頃に熱心に聴いていたアーティストがある。GARNET CROWという男女4人組のバンドだ。自室にいてぼんやりしているときは大体聴いていた。音があると集中できないたちなので、本や漫画を読んだり勉強したりするときは止めたが、それ以外はずっと、睡…

感想24『あるべき場所』・『街角の科学誌』

40.原田宗典『あるべき場所』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 表題作を含む5編を収録している。はじめの2編は日常に近い雰囲気だ。展開はねっとりしているというか、もっさりしているというか。何か新展開を期待していると、何も起こらない焦ったさがある…

俳句7「切れ字『や』」

今回は切れ字の中でよく使われる「や」・「かな」・「けり」の三つのうち、「や」にフォーカスして説明していきたい。 何に付けるか 「や」は、個人的には切れ字の中で最も汎用性が高く、かつ効果的に使える切れ字だ。高校古典の文法書を引っ張り出してみる…

感想23『怖いへんないきものの絵』

39.中野京子、早川いくを『怖いへんないきものの絵』(幻冬社) 再読したい度:☆☆★★★ 図書館シリーズ。題名をみて、怖い絵やらへんないきものやら、人気のありそうな内容のいいとこどりかと思って手に取ったら、まさしくそうだった。だが、そんな安易な取…

よくあれという思いやり草の花

改札を出ると、まだ朝早いというのにカレーの匂いがした。食べ物の良い匂いがすればその出どころを探るというのは、人間に備わる本能ではなかろうか。結局のところ、その主は少し前をゆくサラリーマンの食べる「カレーまん」で、合点がいったのと同時に、何…

日本酒3『立山特別本醸造』・『純米大吟醸鰊御殿北の誉』

ゆるりと3回目。酒瓶のバックに写る風景が引っ越す前の家なので、一年ほど前に飲んだ酒だ。当時のメモを頼りに味の印象を語ることにする。今回は、一緒に食べた料理をもとに、合わせ方の提案にも挑戦した(間違う恐怖でビクビクと震えながら)。 4 立山 特別…

路傍の攻防

突然だが、まずはタイトルを声に出して読んでみて欲しい。 Repeat after me, "路傍の攻防". 「「「路傍の攻防」」」 うん、なんか良くない? 韻踏んでない? Yo! 路傍の攻防 そりゃ日々の風景 初動に翻弄 だって右の想定 粗相も愛嬌? No 無理な行程 無謀な…