ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

思考の道草

知識という型(かた)

もうすぐ2歳半になる息子とのあいだに、いつの間にやら会話らしい会話が成立している。「今日なにして遊んだの?」と問えば「公園いったよ。○○ちゃんが鬼したの」と答え、「水たまりは入っちゃだめだよ」と声をかければ「長靴じゃないからだめだね」と返す。…

海も会話も

先日、監事との意見交換会なるものに出席した。各部から若手を集めて、ざっくばらんに所属組織の現状について意見を聞きたいというのである。何も意見がないのも忍びないと、最近の困りごと、課題、改善して欲しいことなどを記したメモをもって席についた。 …

知らぬが仏

『老婆心』に『知らぬが仏』と、どうも説教臭い話題が続くが、鬱陶しがらずにお付き合いいただきたい。あと、ここでの「知らぬが仏」は原意とは少し異なることを断っておく。 階段を駆け降りるという行為は、私の生活圏ではほとんど毎日の動作といっていい。…

老婆のこころ

ろうば-しん【老婆心】 年とった女の親切心がすぎて不必要なまでに世話を焼くこと。必要以上な親切心。主として自分の忠告などをへりくだっていう語。「―ながら申し上げる」 ──広辞苑より 「よかれと思って」と考えることが多々ある。友人の言うところの(彼…

ハードルが低い

最近、首肩腰の張りや痛みがひどくて鍼灸治療を受けていることは前にも記した(2023年の目標)。しかし、それだけではままならないので、運動後や就寝前はなるべく時間をつくってストレッチをするようにしている。 私の中のストレッチや準備体操の基本は小学…

教師よ、後ろ向きであれ

友人と本屋に立ち寄った折、「人間は自己肯定感が10割」と書かれた帯を見つけて笑った。肯定感の「こ」の字も知らない我々は、「人でなし」の烙印を押されたことになる。この先は、畜生という自覚をもってひっそりと生きてゆこうと思った。 さて、それぞれの…

直感を疑わない

私の人生の「座右の銘」に突如躍り出た『直感を疑わない』(2022年の振り返り)への思いを語りたいと思う。 私は、選択するとか熟考するとか、何か人生の大きな決断と思われるようなことが得意ではない。だから、高い家電を選ぶとか、結婚するとか、家を買う…

紳士は手足から

コンプレックスとまでは言わないが、私は人より手が小さいことを昔から気にしていた。高校で野球部に入らなかった一因もこれだ。中学で使用していた「B球」の大きさが限界だった。硬式球はこれより大きくなる。送球に支障が出るに違いなかった。 どれくらい…

埃舞い、光を掴む

息子が一歳になった。 彼にとっては自分の力でできることが増え、また我々はそれに応じて気付かされることが多い毎日だ。 彼の微笑ましい動作の一つに「手をぐっと握り、ぱっと開く」を繰り返すというものがある。光り輝くものを指して、我々大人は手をパー…

くせのはなし

人には必ず一つや二つは癖というものがあって、それらはあまりにも自分の言動に溶け込んでいるため、往々にして自分自身では気づかないものである。言い換えれば、癖は他人に指摘されて初めて気づくことがほとんどだ。しかし、普段ひとりになることが多い空…

友達百人

先日、私がいつものように、何か私の異常っぷりをありのままに見せつけたとき、そんなんだから友達が少ないんだ、と妻に言われた。そして息子の名を呼び、〇〇は友達百人作るんだもんね、と語りかけた。九ヶ月の息子は、なんのことやらただニヤけているだけ…

ソリの記憶、タライの笑い

昔、おそらく幼稚園にも通う前の話だ。冬、雪国が故郷の私は、友達と駐車場で雪遊びをしていた。 当時はアパート暮らしで、私は一階、その友達は二階に住んでいた。アパートは、駐車場から階段を五、六段ほど上がって一階の居室が並ぶ廊下にたどり着くような…

声を上げることの大切さ、無力さ

意見を述べることは重要である。学生時代、板書をルーズリーフに書き留めていた。物理や数学では図を描くし、また式も微積分やら行列やら縦幅が必要になることが多かったので、罫線のない、無地のルーズリーフを愛用していた。大学生協にはそれが売っていな…

「受けること」と「発すること」

半年ほど前、諸事情により2ヶ月間くらい一人暮らしをしていた。だからといって変わったことはほとんどなく、普段通りのだらりとした生活が続いた。唯一、特別だったのは、自炊をしたことだろう。朝は納豆やめかぶをご飯にぶっかけるだけなので手間はないが、…

ソニックおじさんの杖に発電機を仕込んではどうだろう

今回は表題のとおり、ソニックおじさんの杖に発電装置を仕込んではどうだろう、という提案と考察をしたいと思う。そのためにはまず、ソニックおじさんとは何者かという説明が必要だろう。 ソニックおじさんは朝、我が家の近所に現れる老人だ。決まって、駅の…

船乗りは、若い

昨年末に、航海中の時間と記憶の異質性について触れた(2021年の振り返り)。海と陸とでは、空間はもとより時間にも大きなギャップがあるような感じがする。そして、その結果として、その間には記憶の乖離のようなものが生じる。船上の生活は、陸上の”日常”…

座右の銘候補を考える

年始に「座右の銘を考える」というのを目標として掲げた(2022年の目標 )。これから数十年、ひいては人生(そういうと仰々しいが)をかけて達成すべき目標をもっていても良いと考えたのだ。思い立ったのは、とある組織の新任職員の紹介ページを眺めていたと…

『いつも何度でも』の包容力

ご存知『千と千尋の神隠し』の挿入歌である。作詞は覚和歌子氏、作曲と歌は木村弓氏だ。映画の公開(2001年)当時、私は小学生であった。中学生時代には、学級ごとの出し物か何かでこの歌を合唱した記憶がある。 先日、現在の木村弓氏が歌うこの曲を聴いて涙…

私だけの音楽

中・高生の頃に熱心に聴いていたアーティストがある。GARNET CROWという男女4人組のバンドだ。自室にいてぼんやりしているときは大体聴いていた。音があると集中できないたちなので、本や漫画を読んだり勉強したりするときは止めたが、それ以外はずっと、睡…

たとえばシャトルの落ちる速さで

最近、バドミントンに力が入っている。職場のバドミントンチームのリーダーがやる気で、週一回は仕事終わりに借りた体育館で打ち込んでいる。 部活でやっていた高校時代と比較して、当然ながら練習量は劇的に少なく、また体力も落ちたのだが、ひょっとしたら…

さよならは難しい

私は物持ちがいい。エコだとかSDGsだとか流行りのものではなく、私に備わる根深い性質で、周囲に怖がられるくらいに、気づけばずっと同じものを使っている。 例えば、小物を入れて持ち歩いている巾着袋。これは私が幼稚園に通っていたとき、弁当入れに使って…

誰もが誰かのExample

少し前の話になるが、肩と首が重くてどうしようもなくなり、整骨院に通っていた。治療してもらったのははじめてだったが、先生いわく、「なかなか見ないひどいコリ」だったらしい。 昨年夏の初診から、週一回のペースで治療してもらっていた。十五分程度のも…

ゴルフはできないが、練習場は嫌いじゃない

ゴルフをほとんどやったことがない。コースに出たことはもちろんないし、ボールをまともに前に飛ばせるかも怪しい。だが、妻と友人と正月のテレビ特番を眺めていて、ふと、ゴルフには何故かあたたかい印象があることに気がついた。 ゴルフは大人のスポーツと…

お楽しみは最後まで

最近になってようやく、『楽しみ』という感情が人並みに芽生え始めた。この夕食は唐揚げで締めようとか、次はあの曲を熱唱しようとか、 少し先の未来に対する高揚感は無いわけではなかった。そういったものを「短期的楽しみ」と呼ぶのなら、これまでの私には…

はじまりの99記事を振り返る

100記事目である。ブログを始めたのが2016年11月だったから、約4年での区切りとなった。平均すると1ヶ月に2記事程度の投稿だ。統計的にみれば意外と悪くないペースのように思えるが、1文字も書かない月もあれば、反対にひと月に5つも6つも公…

麺をすするとき、幸福と不幸がいつも背中合わせでいる

1999年12月31日、私は自宅で一家団欒を楽しんでいた。 片付けないままのクリスマスツリーの電飾を灯し、『ゆく年くる年』で除夜の鐘を聞く。そんな不釣り合いなどお構いなしに、小学生の私と幼稚園児の弟たちはこれまでとは少し違った年越しに心躍らせていた…

信じる心ってなんですか?

数ヶ月前から愛でていた金魚草という花が、数日前に二、三咲いた。 一度は全部枯れてしまって、開花の時期もとっくに過ぎていたのだが、日なたを見つけては運び、剪定もこまめにやって世話を続けていたら、立派に咲いてくれた。一縷の望みを抱きつつ、愛し続…

好きと言っていい

友人の文章(それでも好きだと言えるのか )を読んだ。良い文章には考えさせられるものだと常日頃思っているが、今回もその例外ではなかった。 読んでもらえるとわかるが、彼の文章は大きく三段構成となっている。まずは『好きの公言』について。これを「好…

謎が嫌いなんだ

昔からテーブルが汚れるのが嫌だった。家族で食卓を囲んでいるとき、食べ物をこぼしたままにしておくことが許せなかった。汁が一滴垂れただけで、半狂乱になって拭いていた。 別に潔癖というわけではない。むしろ、どちらかというとズボラなほうだろう。一人…

シソンヌ「密室ゲーム」の女はあらぬ吊橋を渡り、そして破壊する

今回はお笑いコンビ「シソンヌ」のネタ『密室ゲーム』について書きたいと思う。『密室ゲーム』は芸人同士がネタを交換するという番組の企画から生まれた。シソンヌ同様コントを得意とするコンビ「チョコレートプラネット」の持ちネタをアレンジしたものだ。 …