ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021年の振り返り

今年の初めに掲げた7つの目標に沿って、今年一年を振り返っていきたい。 【生活に関して】 1. 保険に加入する→× 哀れなり! 先を見据えた行動など皆無! 先日、申請書を手に入れるための申請書を出したところ。 2. 引越し→◎ 子が生まれるのを機に、ばっちり…

まだ階段は一段飛ばしで下らない

階段を一つ飛ばしで下りるのが怖くなった。おそらく高校生くらいまでは、難なく降りていたはずだ。少なくとも、中学時代には部活の階段トレーニングでやっていたから間違いない。 階段を駆け下りることをしなくなったのはいつからだろう。上りは、一段飛ばし…

肝油ドロップの匂い

コンディショナーを替えて数日、ずっと何かの匂いに似ているなと思っていたが、ようやくひらめいたものがあった。肝油ドロップの匂いだ。 乳白色の潰れた楕円体、さながら小さな碁石のようなそれは、表面には白い粉末か顆粒が付着していて、噛むとジャリっと…

『いつも何度でも』の包容力

ご存知『千と千尋の神隠し』の挿入歌である。作詞は覚和歌子氏、作曲と歌は木村弓氏だ。映画の公開(2001年)当時、私は小学生であった。中学生時代には、学級ごとの出し物か何かでこの歌を合唱した記憶がある。 先日、現在の木村弓氏が歌うこの曲を聴いて涙…

感想25『あすなろ物語』

42.井上靖『あすなろ物語』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆☆☆☆ 読み始めてすぐ、いつか読解問題で取り上げられていたのを読んだことを思い出した。一度問題を解いただけなのにはっきりと記憶に残るほど、問題の部分(本書の第1章の終盤にあたる)は自分にとっ…

私だけの音楽

中・高生の頃に熱心に聴いていたアーティストがある。GARNET CROWという男女4人組のバンドだ。自室にいてぼんやりしているときは大体聴いていた。音があると集中できないたちなので、本や漫画を読んだり勉強したりするときは止めたが、それ以外はずっと、睡…

感想24『あるべき場所』・『街角の科学誌』

40.原田宗典『あるべき場所』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 表題作を含む5編を収録している。はじめの2編は日常に近い雰囲気だ。展開はねっとりしているというか、もっさりしているというか。何か新展開を期待していると、何も起こらない焦ったさがある…

俳句7「切れ字『や』」

今回は切れ字の中でよく使われる「や」・「かな」・「けり」の三つのうち、「や」にフォーカスして説明していきたい。 何に付けるか 「や」は、個人的には切れ字の中で最も汎用性が高く、かつ効果的に使える切れ字だ。高校古典の文法書を引っ張り出してみる…

感想23『怖いへんないきものの絵』

39.中野京子、早川いくを『怖いへんないきものの絵』(幻冬社) 再読したい度:☆☆★★★ 図書館シリーズ。題名をみて、怖い絵やらへんないきものやら、人気のありそうな内容のいいとこどりかと思って手に取ったら、まさしくそうだった。だが、そんな安易な取…

よくあれという思いやり草の花

改札を出ると、まだ朝早いというのにカレーの匂いがした。食べ物の良い匂いがすればその出どころを探るというのは、人間に備わる本能ではなかろうか。結局のところ、その主は少し前をゆくサラリーマンの食べる「カレーまん」で、合点がいったのと同時に、何…

日本酒3『立山特別本醸造』・『純米大吟醸鰊御殿北の誉』

ゆるりと3回目。酒瓶のバックに写る風景が引っ越す前の家なので、一年ほど前に飲んだ酒だ。当時のメモを頼りに味の印象を語ることにする。今回は、一緒に食べた料理をもとに、合わせ方の提案にも挑戦した(間違う恐怖でビクビクと震えながら)。 4 立山 特別…

路傍の攻防

突然だが、まずはタイトルを声に出して読んでみて欲しい。 Repeat after me, "路傍の攻防". 「「「路傍の攻防」」」 うん、なんか良くない? 韻踏んでない? Yo! 路傍の攻防 そりゃ日々の風景 初動に翻弄 だって右の想定 粗相も愛嬌? No 無理な行程 無謀な…

三島くん

学生時代に帰省した折、両親や弟たちは出払って、特段することがなくなったので、居間で本を読んでいた。 しばらくすると祖母が「お茶でも飲むか」と声をかけてきた。首肯してありがたくいただくことにする。 祖母は茶をすする私をみて、満足げな笑みを浮か…

感想22『人間失格』

38. 太宰治『人間失格』(角川文庫) 再読したい度:☆☆☆★★ 言わずと知れた太宰治の代表作。再読シリーズだが、十数年前の私には理解力がなく、読むのを途中でやめたかもれないので、ほとんど初読である。太宰の入水自殺の6日後、遺体の上がった6月19日を「…

感想21『科学と宗教』

37. Thomas Dixon(著) 中村圭志(訳)『科学と宗教』(丸善出版) 再読したい度:☆☆★★★ 学生時代、修士から博士課程にかけて、専門の研究に加えて、とあるプログラムに所属して副専攻のような形式で学んでいた。その関係で、科学と社会といった類の話題…

感想20『数と記号のふしぎ』

36. 本丸諒『数と記号のふしぎ』(SBクリエイティブ) 再読したい度:☆★★★★ 図書館シリーズ。数学で使われる数字や記号がまとめられた内容だ。知らない表現があったらどうしようとヒヤヒヤしていたが、全て目にしたことのあるものだったのでそこは安心した…

たとえばシャトルの落ちる速さで

最近、バドミントンに力が入っている。職場のバドミントンチームのリーダーがやる気で、週一回は仕事終わりに借りた体育館で打ち込んでいる。 部活でやっていた高校時代と比較して、当然ながら練習量は劇的に少なく、また体力も落ちたのだが、ひょっとしたら…

感想19『そして、バトンは渡された』・『5分後に意外な結末 ベスト・セレクション』

34. 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文春文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 実の親との死別や親の離婚などを経て、4度苗字が代わった少女と、親たち、友人たちの関わりあいを描いた物語。読後、記事を書くために少し検索したら、「令和最大のベストセ…

さよならは難しい

私は物持ちがいい。エコだとかSDGsだとか流行りのものではなく、私に備わる根深い性質で、周囲に怖がられるくらいに、気づけばずっと同じものを使っている。 例えば、小物を入れて持ち歩いている巾着袋。これは私が幼稚園に通っていたとき、弁当入れに使って…

感想18『俳句がうまくなる100の発想法』

33. ひらのこぼ『俳句がうまくなる100の発想法』(草思社) 再読したい度:☆☆☆★★ 図書館で借りた本の二冊目。タイトルの通り俳句の発想法が全部で百も紹介されている。「これはすぐに使えそうだな」という発想法はメモをとりながら読み、読了してリストア…

感想17『これが名句だ!』

32. 小林恭二『これが名句だ!』(角川学芸出版) 再読したい度:☆☆☆☆★ 図書館の近いところに引っ越し、文庫本以外の本を読む機会が増えつつある。今回は秀句を作者ごとにまとめて解説しているこちらの本を紹介したい。とても勉強になった。 16人の俳人が…

俳句6(コーヒーブレイク)「要点資料」

文章で長々と書かれると読むのに時間と労力を費やさねばならぬという方もいると思って、今回はちょっとコーヒーブレイク。これまでの内容のうち、特に俳句1「五七五のリズム」、俳句2「季語」、俳句3「切れ」に関連した内容を資料にまとめたことがあった…

感想16『黄金を抱いて翔べ』・『カラフル』

30. 高村薫『黄金を抱いて翔べ』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 第3回日本推理サスペンス大賞受賞作。二人の男が金塊の盗みを企て仲間を集め、実行するまでを描いたお話。迫力があってなおかつ緻密な描写が魅力的で、映画になりそうだな、と思ったら案…

父の背中

数ヶ月前、父が退職した。定年を過ぎてから数年間も、同じ会社で勤め上げての退職だった。 少し前には「所長(当然父より年下)が部下や取引先との関係を疎かにしている。俺の言うことに耳を傾けようとしない」と、一方向から聞いただけでは状況を把握しかね…

日本酒2『辛口魚沼純米』・『菊水の辛口』

日本酒についての記事更新が滞っていた。この図鑑の方針や評価基準などについては、初めの記事(日本酒図鑑1『はじめに』・『大吟醸 北秋田』)を参照されたい。 2 辛口 魚沼純米 評価:おいしい(B) 日本酒度:+12 酸度:1.5 新潟は白瀧酒造のお酒。バカ…

感想15『砂の女』・『苦役列車』

28. 安部公房『砂の女』(新潮文庫) 再読したい度:☆☆★★★ 砂とともに人々が生活する村に迷い込む男の物語。『近代日本文学を代表する傑作』と称され、海外での評価も高いようだ。不幸な境遇に抗いつつも、砂にまみれた生活に次第に順応していく過程を緻密…

名前のない男

洋上にて。船酔いをしない私だが、「実は、生まれてこのかた酔い続けているのかもしれない」というパラドックスを神妙な面をして口にすると、周りの人たちが失笑した。君は辛味を感じる能力とか、いろいろ感覚が壊れているからね。と先輩が皮肉った。おかし…

感想14(番外編)『そのケータイはXXで』

27. 上甲宣之『そのケータイはXX(エクスクロス)で』(宝島社文庫) 再読したい度:----- 高校生の頃に読んだ一冊だ。ここにとりあげるときは、既読の本であっても改めて読むようにしているが、今回はあえて再読していない。なぜなら、この本には、物語の…

ニンテンドースイッチで蘇るスーパーファミコンの作品3選

まわりと話しをしてみると、どうやら私は平均よりゲームをする人間らしい。現在、自宅にあるハードウェアはニンテンドースイッチだけなのだが、うれしいのはこのハードでファミコンやスーパーファミコンのゲームが遊べることだ。購入したスイッチのソフトに…

転がる石には苔が生えぬ

春は出会いと別れの季節であるらしい。「らしい」と他人事なのは、卒業入学など行事の結果として生じる事象を、季節そのものと直接結びつけることが、私の中では少々短絡的で洒落臭い気がするからである。 しかし、そんな屁理屈をこねても、この時期に出会い…