ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

感想18『俳句がうまくなる100の発想法』

 

 

33. ひらのこぼ『俳句がうまくなる100の発想法』(草思社

再読したい度:☆☆☆★★

 図書館で借りた本の二冊目。タイトルの通り俳句の発想法が全部で百も紹介されている。「これはすぐに使えそうだな」という発想法はメモをとりながら読み、読了してリストアップされていたのが二十二個。そこからさらに厳選し、ここでは例句と私の感想を交えて十の発想法を紹介する。なお、見出しの数字は本に対応させてあるので、気になった方は是非ご一読いただきたい。

 

3. しぐさをとらえる

笠脱ぎて少女に戻る風の盆 安里道子

 何気ない仕草でも、場面や心情がうまく合致すれば特別なものになる。普段の観察眼が大事。

 

10. 相手の台詞で一句

近くまで来たのでと言う秋桜 鈴木鷹夫

 これも意識しなければ過ぎ去ってしまうような日常。忘れっぽいので少しでも「おっ」と思ったことはメモをとろうと思う。

 

28. 理由を考える

球形にならむとトマト凸凹す 岩津厚子

 ものに意思をもたせるように、意外性のある理由を考えられると面白い。

 

35. 科学的に考える

汗かきてすこし私の蒸発す 坊城俊樹

 これも意外性がものをいう。ただ科学的に正しいことを言っても鼻につくだけで、面白くはならない。

 

46. 場面転換

かくれんぼ三つかぞえて冬となる 寺山修司

 俳句は一瞬を切り取るほうがうまくいきやすいのに、あえて時間的な広がりをもたせるテクニック。ちょっと無理やりでも断言すれば面白い。

 

50. 言い換える

遠足といふ一塊の砂埃 後藤比奈夫

 対象を客観的に、よく観察すること。あとは連想ゲームだ。当たり前では面白くない。

 

62. 強引に断定する

から松は淋しき木なり赤蜻蛉 河東碧梧桐

 断定されると「確かにそうかも──」と思ってしまうことがある。そう思わせたら勝ち。

 

65. アルフォリズム(警句)

いつはりもいたはりのうち水中花 鷹羽狩行

 五七か、七五でなにか真理をつくような言葉がみつかれば、あとは組み合わせる季語で可能性は大きく広がる。例句は「水中花(水に入れると花開く造花)」をもってきたのが絶妙。

 

81. 無聊を詠む(退屈を詠む)

とある短日うどん屋にわれ一人 辻田克巳

 原点にして真髄の感じ。なんでもないことを詠んでこその味わい。季語が効いてくる。

 

89. 居ないことを詠む

父の座に父居るごとく雑煮椀 角川春樹

 いる人、あるものに目がいくのが当たり前。あえて居ないこと、居なくなってしまったことを詠むことで、なんともいえない余韻を表現できる。