ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

シアトル貧乏旅行

 

 出張の嵐も大詰めだ。今回は、アメリカはワシントン州シアトルに行った。

 シアトル・タコマ国際空港に到着後、ライトレールに乗って学会会場周辺へ。電車やバスでの移動にはORCA(オルカ:シアトルのシンボル的存在であるシャチのこと)カードを購入すると便利だ。日本でいうSuicaカードのようなもの。

 会場近くの駅前では、早速アメリカらしいお菓子たちが出迎えてくれた。

 ホテルへ向かう道中に通り過ぎた、植物園のような謎の球体。到着から8日後くらいに気づいたのだが、実はこれ、アマゾン本社の一部らしい。

 シアトル発祥、あるいはシアトルに本社を構える企業を聞くと、そうそうたるものだった。アマゾンに加えて、スターバックスタリーズコストコボーイングマイクロソフト、……。下の写真は、スターバックスの一号店だ。ここにしかないグッズを購入できるとあって、平日でも30分待ち程度の行列ができていた。私も並んで店内へ。

 この頃になるとすっかりわかってくるのだが、シアトルは物価が恐ろしいほど高い。表題の真意もここにある。日本にいるときでさえボンビーの私なんか、昨今の円安も相まって、シアトルではキングボンビー以外の何者でもない。聞けばシアトル住民の年収中央値は3000万円以上だとか。そんなん太刀打ちできんわ。
 スターバックスはPike place marketというショップやカフェが立ち並ぶマーケットの一角にある。活気があって華やかで、歩いているだけで面白いのだが、ひときわ彩りを添えるのは、花屋だ。

 こんな花屋がたくさんあって、購入した花束をもって歩く老若男女もたくさんだ。一束20ドル=3000円以上するのだが、やはりこのあたりは金持ちだらけということか。このような街ほど、貧富の差は激しくなるのだろう。ホームレスの人たちを多く見てきたが、彼らの中でもテントを張って生活しているような人たちは、テントの入り口に必ずこんな花を飾っていた。衝撃ではないか? この花束を買う余裕がある、だと? 貧乏人にとっては恐ろしい街だった。

 あとは魚たちがデーンと並べられた魚市場があったり(写真でずり落ちそうになっているのはアンコウの一種)、奇抜な色のお菓子たちが並んだ店があったり。あとは、地図だけを売る地図屋は味わい深かった。チューインガムが壁中にくっつけられた「ガムウォール」なる場所は、ほのかに甘い香りのする汚ったねえ名所だった。

 あとは、一個750円のおにぎりを齧ったり、一杯3000円近いラーメンを泣きながら啜ったり
しながら過ごす日々。バーガーやタコスなんかも、まあ想像通りの美味しさだったが、如何せん高額だ。写真を見ながら振り返っていたら腹が立ってきたので、掲載は控えたい。自らの貧乏を呪う。こんちくしょう!

 帰り際、自然を味わう時間がとれたので、最後に触れておこう。前提として、シアトルは北緯47.5度付近、北海道よりも北にあり、10月下旬で最高気温が10度前後という日が続いた。ワイシャツにニット一枚あれば大丈夫だろうと、防寒をおろそかにした私は痛い目をみた。

 街のあちこちにある公園には、渡鳥らしいガンのようなのがたくさんいて雑草を食っているので、草刈機いらずのようである。あと、カラスは日本に比べて小型で、襲ってくる心配がない。鳴き声も高音で、かわいらしい。

 そして、とある岬の大自然よ。白い靴を泥で汚しながら歩いた海岸線には、日本とはスケールの違う、規格外の倒木の数々。これらをまたいだりくぐったりしながらひたすら歩いた。

 到達した河口付近で、野生のアシカとアザラシを見た(写真では、アシカが頭を出している)。

 これには正直驚いたし、素直に嬉しい出会いだった。妻にこのことを報告すると、「野生とは?」と理解できていなかった。全てのアザラシが動物園や水族館で生きていると思っているのか(日本にいれば当然の認識か?)、沿岸や河口付近に棲みついていることを説明すると、彼女も驚いていた。

 あとは、ボードゲーム専門店をひやかしたり、ワシントン大学のストアでお土産を物色したり、動物園で白いオオカミ、フクロウ、ヤマネコやら、だらけたヒグマやゴリラやらをみたり……。一番美味かった食い物は、帰りの空港で食べた「サーモンのディップ」だろうか。パンの耳を上げたようなカリカリの旨い何かに、サーモン入りの旨いソースをつけていただく(写真右)。ここで、10日ぶりのまともな野菜を何かの旨いディップでいただき、全身が歓喜した(写真左)。

 そして11時間ほどかけて帰国。日本は安くて美味くて清潔で安心の国であることを痛感する。あと3000万円くらい年収が高かったら、もっと楽しめたかもしれない。シアトルは、そんな街。