ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

野生の「殻なしガニ」が現れた

 

 2年前の今頃、私の心はマインドマップによって丸裸にされた。

daikio9o2.hatenablog.com

結果として、私は深層心理でカニを欲している一方、殻をむいて食うのはとても面倒臭いと思っていることが明らかとなった。何処かの誰かが、「殻なしガニ」など開発してはくれないものか? 自分さえ気づかぬうちに、そう願っていたのだ。

 そして、その2年越しの願いが、突如として叶ってしまった。下の写真を見て欲しい。

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「殻なしガニ」である。現れたときからこの姿だったので、野生で間違いないと思う。私の知らぬ間に、本当に殻なしガニが開発されてしまっていたのだ。そして、心ない飼い主が、その奇跡のカニを手放したことで、野生化してしまったのだろう。

 望んではいたものの、実際に眼前にすると「これは神への冒涜ではないか?」という思いを抱かずにはいられない。ひどいもので、防御力がゼロのカニである。いや、関節部分は甲羅があるので、そこで上手に攻撃をさばくことができれば、あるいはゼロではないか。

 可哀想ではあるものの、こんな食べやすい姿を晒されたら、私の心の中の狩猟民族が黙っちゃいない。しゃぶしゃぶにして食ってやった。非常に美味であった。このカニは、私の積極的な納税によって得られたものだ。納税は良い。神は我々に納税という素晴らしい機会をお与えになったのだ──!

 この「殻なしガニ」、湯にくぐらすときはここをもて、とばかりに関節だけ殻がある。さながらポッキーのチョコが付いていない部分のようである。人間の欲望のまま進化させられたのだ。哀れみを抱いてやまない。

 しかし、人間ほど欲深い生き物はいない。身があれば関節部分だって食いたくなるものだ。私は力を込めて殻を割ろうとした。割れない。面倒臭いので噛み付いてやった。歯で殻を砕き、私はちうちうと身をすすった。

「殻に切り込み入ってるんだから、そこから剥いて食いなさい」

 妻が言った。え、切り込みだって? なけなしの殻さえ人為的に操作されているとは──。少しは頑丈改め、やっぱり防御力ほぼゼロだ。なんて進化をさせるのだ、恐ろしいよ人間様!

 でも、いくら切り込みが入っているとはいえ、やっぱり剥くのは面倒だ。手や皿やテーブルが汚れるじゃん? ああ、「口に入れたら溶けてなくなるオブラートのような殻が、都合よく関節だけについたカニ」なんか開発されないかなあ。