ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

日曜は中華の香り

 

季節の変わり目、寒暖差激しい今日この頃。

友人が風邪をひいたらしい。

風邪には豚や鶏よりも牛肉が良いらしいよと教えたら、牛丼大盛り豚汁セットを食っていた。

それだけ食えればたぶん大丈夫。それに、おまけで豚まで摂取している。

 

最近は馬鹿になってしまったのであまりないが、天才少年であった小学校低学年あたりまでは私もそれなりに風邪をひいた。

療養中のパターンは決まっていた。

布団に横になったまま、普段は学校だから見られないテレビ番組をみて、母にお菓子をねだって、おかゆを食べて、薬を飲んで、巨大な岩を転がしてくるムキムキのおじさんに追いかけられる夢でうなされて、そして起きると少し回復している。

唾を飲み込むのもつらいほど喉が痛いときには、ゼリーをねだった。でも、そこに塩気が欲しくなるので、一緒にオーザックも食べた。

サクサクパリパリが喉に刺さってしまうので、療養食に適しているとは言い難いが、ゼリーとオーザックのコンボが何故か私の風邪の定番だった。

一度ねじれた回路というのはなかなか修正できないらしく、今でも稀に体調が悪くなると、ゼリーとオーザックが食いたくなる。

 

ある日曜の夜、一人自宅でぼんやりしていると、不意に中華料理が食べたくなった。どこか懐かしいこの感覚に戸惑いつつも、回路を逆に辿っていくと、やがて過去の記憶に行き着いた。

昔、実家の近所に美味い中華料理屋があった。父親の仕事が休みの日曜には、ときどきそこで夕食を食べた。

から揚げ、酢豚、八宝菜、チンジャオロースにチャーハン、ラーメン、家族六人で取り分けて、みんなでたらふく食った。デザートのかぼちゃのアイスがまた美味だった。

私が地元にいる間、恐らく中学時代にはその中華料理屋は無くなった。

それから家族で中華を食べに行くことなんてなかったし、それを特別懐かしむこともこれまでなかったのに、突然何処かのスイッチが入って、回路を伝って、中華料理が出力されてしまった。

 

この前の日曜は友人がこちらに遊びに来ていて、夕方には二人してぼんやりテレビを眺めていた。

どうも、ちびまる子ちゃんが1時間スペシャルらしかった。

じゃあ今日はサザエさんシンドロームになるひとはいない訳だ。友人がポツリとそんなことを言った。このシンドロームも回路のねじれだろうか。個人的でなく、国民の多くが抱えたねじれ。

そういえば、この友人とは中華を食う機会が何故かやたらと多い。

また中華かよ、なんてその度に二人して大袈裟に文句をいってみせたりするが、本当に嫌ではない私は、どうもあの日が恋しいらしい。