祖母が旅立ち、まもなく四十九日となる。実家から無事に納骨したとの連絡があった。
葬儀で祖母に送った別れの言葉。公にするか否か迷ったが、私の言葉をきいて「自分の家族のことも思い浮かんだ」と言ってくれた人がいたので、そうして家族を思う人が一人でも増えたなら嬉しいと考え、公開することにした。
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本日、私たちは祖母○○に、お別れの挨拶をしなければなりません。
ついこの間まで、自宅でお酒を酌み交わしていたように思いますが、本当に残念です。
おばあちゃん、あなたは、はつらつとした、強い人です。
私がまだ小学生低学年の頃、あなたは私の腕相撲の相手でした。
腕をまくってみせてくれる力こぶ。
その力強い腕には、何度挑んでも勝つことができませんでした。
そして今だに、私はあなたに一度も勝ったことがありません。
英語を習うことのなかったあなたは、私や弟の○○、○○に「このアルファベットはなんだ」とよく尋ねてきました。
そして、チラシの裏など白い紙をみつけては、「A、B、C」と何度も書いて練習していました。
身の回りのことはもちろん自分の力でやる。
そして、新しいことにも果敢に挑戦する。
そんな心の「強さ」も、とても印象に残っています。
私たち兄弟三人は、自転車の乗り方をおばあちゃんに教わりました。
私はとりわけ飲み込みが悪く、転ぶたびに「おばあちゃんのせいだ」といって責めました。
それでも、あなたは私と真剣に向き合い、粘り強く練習につきあってくれました。
こんなふうに、あなたは強いと同時に、本当に優しい人でもあります。
我々が小さな頃は、近くの公園で一緒に遊び、また新幹線を見に線路沿いの空き地に連れて行ってくれました。
そして、私たちが進学し、家を離れて暮らすようになっても、帰省のたびに栄養ドリンクや、バナナや、たくさんのお菓子を用意してくれていました。
進学というと、私が大学への合格を報告したとき、あなたは優しい笑みを浮かべると、「んだべ」と一言いっただけでした。
そのときは拍子抜けしたように記憶していますが、これもあなたらしい、私を信頼してくれているからこその優しさだったのだと思います。
あなたが華やかな衣装を着て、扇子を片手に踊っている姿。
それを見たのは近所のコミュニティセンターだったでしょうか。
美しく舞う姿を今でもよく覚えています。
その一方で、この前、会いに行ったときなどは「来てくれて嬉しいね」といって、手を動かして、コミカルに踊って見せてくれました。
あなたは、強く、優しく、そして愉快なひとです。
帰省する度に、あなたは「大っきくなったな」と声をかけてくれました。
私も、弟たちも当然、もう身長は伸びていないのですが、これからも、うちに帰ったときには、おばあちゃんにそう言ってもらえるよう、これからも人として、成長し続けたいと思います。
あなたが何か優しくしてくれたとき、私はその場でお礼を言えたこともあれば、逆に素直に感謝の気持ちを伝えられないこともありました。
ですから、今ここで、あなたがしてくれた全てのことにお礼をさせてください。
おばあちゃん、あなたの強さや優しさに触れ、あなたとの日々を本当に楽しく過ごすことができました。
今まで本当にお世話になりました。ありがとうございました。
どうか安らかにおやすみください。