ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

祖母への恋文

 

祖母が旅立ち、まもなく四十九日となる。実家から無事に納骨したとの連絡があった。

葬儀で祖母に送った別れの言葉。公にするか否か迷ったが、私の言葉をきいて「自分の家族のことも思い浮かんだ」と言ってくれた人がいたので、そうして家族を思う人が一人でも増えたなら嬉しいと考え、公開することにした。

 

   ○

 

本日、私たちは祖母○○に、お別れの挨拶をしなければなりません。

ついこの間まで、自宅でお酒を酌み交わしていたように思いますが、本当に残念です。


おばあちゃん、あなたは、はつらつとした、強い人です。

私がまだ小学生低学年の頃、あなたは私の腕相撲の相手でした。

腕をまくってみせてくれる力こぶ。

その力強い腕には、何度挑んでも勝つことができませんでした。

そして今だに、私はあなたに一度も勝ったことがありません。

 

英語を習うことのなかったあなたは、私や弟の○○、○○に「このアルファベットはなんだ」とよく尋ねてきました。

そして、チラシの裏など白い紙をみつけては、「A、B、C」と何度も書いて練習していました。

身の回りのことはもちろん自分の力でやる。

そして、新しいことにも果敢に挑戦する。

そんな心の「強さ」も、とても印象に残っています。


私たち兄弟三人は、自転車の乗り方をおばあちゃんに教わりました。

私はとりわけ飲み込みが悪く、転ぶたびに「おばあちゃんのせいだ」といって責めました。

それでも、あなたは私と真剣に向き合い、粘り強く練習につきあってくれました。

こんなふうに、あなたは強いと同時に、本当に優しい人でもあります。


我々が小さな頃は、近くの公園で一緒に遊び、また新幹線を見に線路沿いの空き地に連れて行ってくれました。

そして、私たちが進学し、家を離れて暮らすようになっても、帰省のたびに栄養ドリンクや、バナナや、たくさんのお菓子を用意してくれていました。


進学というと、私が大学への合格を報告したとき、あなたは優しい笑みを浮かべると、「んだべ」と一言いっただけでした。

そのときは拍子抜けしたように記憶していますが、これもあなたらしい、私を信頼してくれているからこその優しさだったのだと思います。


あなたが華やかな衣装を着て、扇子を片手に踊っている姿。

それを見たのは近所のコミュニティセンターだったでしょうか。

美しく舞う姿を今でもよく覚えています。

その一方で、この前、会いに行ったときなどは「来てくれて嬉しいね」といって、手を動かして、コミカルに踊って見せてくれました。

あなたは、強く、優しく、そして愉快なひとです。


帰省する度に、あなたは「大っきくなったな」と声をかけてくれました。

私も、弟たちも当然、もう身長は伸びていないのですが、これからも、うちに帰ったときには、おばあちゃんにそう言ってもらえるよう、これからも人として、成長し続けたいと思います。


あなたが何か優しくしてくれたとき、私はその場でお礼を言えたこともあれば、逆に素直に感謝の気持ちを伝えられないこともありました。

ですから、今ここで、あなたがしてくれた全てのことにお礼をさせてください。

おばあちゃん、あなたの強さや優しさに触れ、あなたとの日々を本当に楽しく過ごすことができました。

今まで本当にお世話になりました。ありがとうございました。

どうか安らかにおやすみください。