ライ麦畑で叫ばせて

日常・数理・旅や触れた作品の留書・思考の道草 などについて書いています。

有言不言実行、そして現状打破維持

 

 不言実行という言葉が好きだ。これはかつて出会った教師の言葉によるところが大きく(「伝える」の上限 )、その師と同様に有言実行という言葉が嫌いでもある。「不言実行とは目標を口に出さずに実行することだ」という説明を見たことがあるが、それは少し違う。目標云々に限った話ではないのだ。理屈をこねたり文句を言ったりせず、黙って実行に移すことの格好良さを、この言葉は説いている。「今からワタクシ、コレやろうと思うんですけどー、わりと高めに目標設定したし失敗しちゃうかもー」はおろか、「やりたくねー」とも「あー、うー」とも言わんでよろしいということだ。

 不言実行は私の人生の目標である。クールに標的を撃ち抜く孤高のガンマンよろしく、ただただ確実に任務を遂行する。これが美学だ。そして、公言してしまったからには、今後は事あるごとにこの目標が頭をよぎるに違いない。言ってしまったのだからもう後にはひけない。やるっきゃないのである。おや、こんな類の、不言実行に似た四字熟語があったような──?

 まあいい。普段私は目標を公言することをしない。というか、目標を立てることもあまりしない。それは私なりの美学でも何でもなく、決めてしまった目標に追い立てられるのが面倒臭いからである。だが、今年はあえてそれをしようと思う。「決して『有言実行』信者になったのではない」という但し書きを添えて。

 では、まずは生活についての目標三つだ。その一、結婚式を挙げる。といっても、挙げることはもう決まっているので、あとはそれまでの準備と当日の諸々を間違いのないように遂行するだけだ。内々の小さな式だが、やるからには良いものにしたい。その二、引っ越しについて考える。結果、引っ越しをするかもしれないし、しないかもしれない。これまでは考えること自体から逃げてきたので、いい加減に向き合わねばなるまい。その三、旅行の行き先と日程を決める。これは俗に言う新婚旅行というやつに近い。ただ、我々はもう新婚ではない。

 次に、趣味に関する目標を二つ挙げたい。第一に、五年ほど前から始めた短編中編の最終調整に入りたい。「今年こそは完成を」と二、三年前から言っているので、少し低めのハードルが良いだろう。来年の完成を見込むとしよう。第二に、何かしらを受賞したい。俳句、短歌、標語、なんでもいい。受賞じゃないが宝くじの当選だっていい。

 最後に、仕事の目標を二つほど。まずは、論文を書く。もうまとめるべき内容が溜まりに溜まってしまっている。さっさとしろよ、という周りの視線も痛い。二本はパブリッシュしたい。それにしても、才能がないってのはツラいものだ。あとは、次の発表のネタを作る。そのためには観測に出ることと、とってきたデータを解析することだ。というか、それが私の仕事の基本である。「当たり前のことを当たり前に」というのが口癖の教師がいたっけなあ。

 ズルズルと先延ばしにしてきたことにけりを付ける。それが大方の目標の共通項である。つまりは、現状打破。だが、その必要性には以前から気づいていた。そして、これからも「現状打破せねば」と思い続けるに決まっている。ずっと前から願い続けているという意味で、すなわち現状維持が目標ともいえまいか。現状維持。私はこの言葉が好きである。人生の目標にしちゃおうかな。