ライ麦畑で叫ばせて

日常/数理/旅や触れた作品の留書/思考の道草 などについて書いています。

新説 風が吹くと

 

風が吹く

風が吹くと木の葉が散る

木の葉が散ると落ち葉が増える

落ち葉が増えると可燃ゴミが増える

可燃ゴミが増えるとゴミ収集に時間がかかる

ゴミ収集に時間がかかるとゴミ収集車の来るのが遅れる

ゴミ収集車の来るのが遅れると朝のゴミ出しに余裕ができる

朝のゴミ出しに余裕ができると起床時間に余裕ができる

起床時間に余裕ができると起床に対する油断が生じる

起床に対する油断が生じると寝坊をする

寝坊をすると通勤通学を急ぐ

通勤通学を急ぐと道中に何かと危険が生じる

道中に何かと危険が生じると人は急ぐことをあきらめる

人は急ぐことをあきらめると遅刻の言い訳を考える

遅刻の言い訳を考えていると隣の席のあの子が現れる

おや、隣の席のあの子がこんな時間にめずらしい、と俺は思う

俺の思いを知ってか知らずか、最近どうも朝が辛くて、と彼女は笑う

起床に対する油断は何も自分だけのものではないことに俺は気付く

君も寝坊? と彼女が訊く

俺は頷く

サボっちゃおうか、と彼女がおどける

俺は戸惑う

サボっちゃおうよ、と今度は手を引く

彼女の長くてつやのある髪が風になびく

俺をやわらかなせっけんの香りが包む

刹那の静寂

音が消え、香りが消え、色が消える

彼女に引かれる手の感覚だけが鋭くなる

俺は頷く

そしてふたりは踵を返す

そしてふたりの恋がはじまる

恋がはじまる

 

それでは聴いてください! チャットモンチーで『風吹けば恋』!

 

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