想像しないでください ── 真っ青な空,白い雲,そしてどこまでも続く大海原を。
梅雨だというのに私の住む地域では雨があまり降らない。ただジメジメと蒸し暑い。勘弁してほしい。
雨の中をバイクで爆走した記憶が遠い。それくらい雨が降っていないということだ。
雨天時の移動は大嫌いだ。濡れるし,視界は悪いし,何かとかさばるし,危険だし。
da_dhinta氏の傘の話が面白かったが,
私は雨の日の危険について書こうと思う。
雨天時の移動で危険なものといえば,マンホールだろう。
自転車やバイクで濡れたマンホールの上を走るのは極力避けたい。
マンホールに対してタイヤを垂直にして乗り,そのまま通り抜ければなんてことないのだが,カーブ中にタイヤが斜めの状態でマンホールを踏んだり,マンホール上でハンドルを切ろうものなら ── 想像しただけで下っ腹の辺りがスンッとなる。
何年も前の話になるが,事実カーブの途中で濡れたマンホールに乗ってすっ転んだことがある。
身体がハイパー丈夫(あるいはハイパー鈍感)なので怪我はなかった(あったのかな?)が,バイクのサイドミラーがブランブランになったことを覚えている。
それからというもの,「雨の日はマンホールは踏まないようにしよう」と意識するようになった。
だが,どうだろう,冒頭の一文を読んで皆さんは ”真っ青な空,白い雲,そしてどこまでも続く大海原” を想像したのではなかろうか。
人間の脳は,実は「否定」を理解できないらしいのだ。
「マンホールを踏まないように」の時点で「マンホール」を意識し,「~ない」は理解ができない。そして結局,バイクはマンホールに向かうことになる。
プロアスリートはこのような「否定」を使わないようにメンタルトレーニングをするという。
「内角に投げないように」ではなく「外角に投げるように」。
「右のバンカーに打たないように」ではなく「左のグリーンに打つように」。
「焦らないように」ではなく「落ち着くように」。
これはまさに ”言うは易く行うは難し” であって,とっさの判断で否定を使わないのは人間にとって至難の業であるらしい。
プロのアスリートがそうなのだから,下級人間たる私なら マンホールを踏むのは当然なのだ。
とっさに「あ,マンホールだ!さあ道路を走ろう!」となるのが最善だろうが,それは難しい。「マンホール」を意識した時点で,脳はその否定に走るからだ。
だから私は,「あ,マンホールだ!タイヤを真っ直ぐにして踏んでいこう!」と考えることにした。
それからというもの濡れたマンホールを幾度となく踏んできたが,角度をつけずに走り抜けるので幸い一度も転倒したことはない。
あえて危ない橋をわたっているようであるが,危なくても橋は橋,雨と一緒に川に流れるよりは良い。