ライ麦畑で叫ばせて

日常・数理・旅や触れた作品の留書・思考の道草 などについて書いています。

祖母への恋文

祖母が旅立ち、まもなく四十九日となる。実家から無事に納骨したとの連絡があった。 葬儀で祖母に送った別れの言葉。公にするか否か迷ったが、私の言葉をきいて「自分の家族のことも思い浮かんだ」と言ってくれた人がいたので、そうして家族を思う人が一人で…

ひとこと感想集 part 7

今回も早速いきます。ネタバレにはご注意ください! 15. 宮本輝『螢川・泥の河』(新潮文庫) 『螢川』は芥川賞、『泥の河』は太宰治賞受賞作である。どちらも、主人公は少年。彼らの体験や心の動きが、彼らの目の高さで、真正面から描かれている。 『泥の…

ひとこと感想集 part 6

今回は一作品に集中する。良い文にはよく考えさせられるものだ。 * ネタバレにご注意ください! 14. 三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫) 疲れた。強固な論理的秩序と膨大な知識量に何度も負けそうになった。数年前の私なら途中で読むのを諦めていただろう。…

有言不言実行、そして現状打破維持

不言実行という言葉が好きだ。これはかつて出会った教師の言葉によるところが大きく(「伝える」の上限 )、その師と同様に有言実行という言葉が嫌いでもある。「不言実行とは目標を口に出さずに実行することだ」という説明を見たことがあるが、それは少し違…

人ばかりの消えるまち

年末年始を実家で過ごした。食って、飲んで、寝る。それだけ数日も続けていると、最近の運動でせっかく引き締まってきた腹がたちまち膨らんでしまった。さすがに身体が心配になって、少し近所を散歩してみることにした。 小雪舞う中を一時間ほど歩くあいだに…

ひとこと感想集 part 5

さあパート5だ! こんにゃろ! 今回は前置きを抜きにしていくぞ! こんちきしょう! * ネタバレにご注意ください! 12. 恩田陸『木曜組曲』(徳間文庫) これぞ静かで奇妙な恩田陸ワールド。五冊に一冊は彼女の作品を読まずにはいられない体となった私だ…

ひとこと感想集 part 4

一言読書感想集も第四弾となった。「一記事につき三〜五冊ずつ紹介できればいいかな」という考えで始めたが、分量的に「一記事二冊」が妥当かもしれない。一冊一冊の感想が充実してきたためだ。 一言というわりに長すぎるのでは? と思い、その適切な分量を…

純粋か素直か(温暖化問題に触れて)

高校一年生のときの担任がなかなか面白い人だった。彼は頭のキレる数学教師で、授業の進行は目まぐるしく、宿題は多く、板書は汚く、声は大きくと、当時はあまりいい印象がなかった。だが、振り返ってみれば、彼には形容しがたい魅力があった。 今になっても…

修羅の道・北海 ──蒼天童の章──

札幌に降り立って(修羅の道・北海 ──漆黒烏の章──)2日目、漆黒の烏の猛攻から逃れてたどり着いたのは、蒼天にそびえ立つ鋭利な塔だった。それは「さっぽろテレビ塔」という建造物らしかった。塔の周りには花壇が並んでおり、塔は美しい花々に装飾されて堂…

ひとこと感想集 part 3

パート1(ひとこと感想集 )、パート2(ひとこと感想集 part 2 )と続けてきた「一言読書感想集」だが、パート1を書いていて気づいたのは「感想が『あとがき』に引っ張られる」ということである。あとがきについて共感あるいは批評的な感想をもち、それに…

ひとこと感想集 part 2

感想を残すことにしてから、「早く感想を書きたい!」という本末転倒な欲求により読書がよく進んでいる。あと、「感想を残さなければ!」という勝手な使命感により内容がよく頭に入ってくる。 一方、「この本も感想集に入れたいなー」という面倒なこだわりか…

修羅の道・北海 ──漆黒烏の章──

私は札幌に降り立った。 札幌に着いたらまず、頭上に注意しなければならない。それも、とりわけ木の上だ。宿敵はそこにひそんでいる。「まさか自分は大丈夫だろう」などというご都合主義的確率論にすがることはできない。油断すれば襲われる。それが修羅の道…

「そりゃそうじゃ」がもたらす思考の欠落について

皆さんはオーキド博士をご存知だろうか。 オーキド博士とは初代ポケットモンスターに登場し、主人公の暮らすまちで日々ポケモンの研究に励んでいる人物だ。主人公に最初のポケモンをくれるのが、何を隠そうこの男である。一見、ただのポケモン博士のように思…

誇りを模索する生き方

他人に誇れるものがない。「誇る」というと大袈裟だが、「〇〇ならその辺の奴に簡単には負けやしない」という得意や自慢が一切なにもない。 何もできないわけではない。自分で言うのもなんだが、一般教養は人並みに身につけていると思うし、これまでの人生に…

ひとこと感想集

これまで何冊の本を読んできたか知れない。これは数え切れないほど多くを読んできたと自慢しているのではなくて、ただ単に数えていなかったというだけのことである。 現在の自宅の本棚には百冊程度の文庫本が並んでいて、ときどきそれらの背表紙を眺めながら…

間違いだらけの数式

「朝ドラ」というものをこれまで熱心にみたことはないのだが、最近その音声をよく聞き流している。そうはいっても、ラクに英語を身につけるがごとく「朝ドラを聴き取る耳」の獲得を目指しているわけではない。私のデスクが昼休みに朝ドラをみたい人が集まる…

あゝ日本海

そのまちには確かに初めて訪れたのに、何処か懐かしい感じがした。 出張で訪れたのは鳥取県境港市。以前話題になった「米子鬼太郎空港」に降り立つと、地元の職員の方が出迎えてくれた。行先までは少し距離があるということで、車で迎えにきてくださったのだ…

お道化一家

二〇十九年に入ってもう三か月が経とうとしているが、ここらでひとつ今年の正月を振り返ってみたいと思う。年末年始、私は実家に帰省していた。以上。 と、まあこれは冗談だが、三か月も過ぎてしまうと記憶がもう曖昧だ。ひとまず思い出せることをいくつか列…

オレサマと豆の木

先日、友人と炉端焼きの店に行った。先の店でたらふく飲み食いした挙句、一度は改札の前まで行ったのに「やっぱもう一軒行くか」といってふらりと立ち寄ったのが、その店であった。 当然お腹は空いていなかったのだが、せっかくの炉端焼きだし何か一つは焼き…

朝朝思う、夜夜思う

記事の下書き数が二十件を超えた。一意専心、物事は一つずつ片付けていく方だと自負していたが、実はそうでもなかったらしい。最近はそうではなくなった、といったほうが正しいだろうか。 昔は運動であれ勉学であれ、一つのことに集中することが好きであり、…

心の何処かでカニが食いたい

みなさんは「マインドマップ」というものをご存知だろうか? 「マインドマップ」とはイギリスの著述家トニー・ブザン氏が提唱した、自らの考えを絵で整理する表現手法である。この手法は、脳の思考を効率よく開放し、記憶力や創造性、相互理解を非常に高める…

模倣と創造

かの有名な物理学者アイザック・ニュートンは、運動の三法則に基づいて古典力学の基礎を確立したことで知られる。彼が提唱した三法則のうち、第二法則は「運動の法則」と呼ばれる。「運動方程式」といわれると、ああ、あれか、と思われる方も多いだろう。法…

我が手に使用許可を

七月某日、名古屋観光に行ってきた。 仕事終わりに新幹線にとび乗って、宿に着いたのは二十一時半頃であった。 荷物をおくが早いか、我々は手羽先を喰らいにいくことにした。私も同行人も空腹と暑さのため、道中はいささか殺気立っていた。 たどり着いた店で…

暗雲と地雷

世の中に無駄なことなんてないんだよ、などという話になったとき、私は中学時代の一場面を思い出した。 私の中学校では定期試験の三週間ほど前になると、A3用紙の簡素な表が全員に配られた。国数英理社が横軸、日付が縦軸に並んだその表に、試験勉強の予定を…

透明な空

*当記事はこちらの話( おだやかな青 - ライ麦畑で叫ばせて)に目を通してから読んでいただけるとわかりやすいと思います。 「真っ直ぐな目で笑った 最初の出会いから君は変わらないね 透明な空によく似合う肌が まるで新しい明日へと誘うよう (GARNET CRO…

成金のゆび、貧乏人のゆび

みなさんご存知のように、海水は水と塩により構成されている。そして、海水の特性を決める最も重要な量に、水温と塩分がある。ここで、塩分とは水に含まれる塩の割合、すなわち塩濃度を意味する。「分」が「濃度」の意味をもつので、本来、「塩分濃度」とい…

おだやかな青

一日に何度、青信号の点滅をみるだろう。 彼奴はあと少し、というところでチカチカとして、途端に切迫感を漂わせる。横断しようとすると決まって点滅し出すんだ、などと悲観的になってみるが、そう感じるのはある意味当然で、青のままの信号を意識しそれに感…

新説 風が吹くと

風が吹く 風が吹くと木の葉が散る 木の葉が散ると落ち葉が増える 落ち葉が増えると可燃ゴミが増える 可燃ゴミが増えるとゴミ収集に時間がかかる ゴミ収集に時間がかかるとゴミ収集車の来るのが遅れる ゴミ収集車の来るのが遅れると朝のゴミ出しに余裕ができ…

矛盾を唄って越えろ

この世界には種々多様な歌がある。 ハッピーな歌や暗い歌、荒々しい歌の話は以前した(幸福な言の葉 - ライ麦畑で叫ばせて)。今回は、聴いていると何故か耳に残る、私にとってはそんなカテゴリにある歌たちを取り上げてみたい。 「マイナス100度の太陽みた…

追憶の大勝負

"What's your favorite ○○? " この英文、中学校を卒業した方なら必ず一度は耳にしているはずだ。 「あなたのお気に入りの○○はなんですか?」 ○○には food とか sport とかを入れてきたのではないだろうか。 そして "OK, let's stand up!" と起立を強制されて…